饅頭や羊羹、干し柿など糖度の高い食品に発生する乾燥を好むカビを知っていますか?

 4月の渋谷教室で、手をよく使う和菓子つくりでは手をきれいにすることが重要であることをお話し、その方法についてもお話させていただきました。その際、受講者様のお一人が、知人の方のお話として、糖度の高い菓子にカビが発生し購入されたお客様からクレームがあったそうで、そのカビの種類を調べたところWallemia sebi(ワレミア セビ)という、病原性はなく環境中に広く分布するカビの一種だったそうです、とお話下さいました。実のところ、私はWallemia sebiの事を知りませんでした。仕事柄、食中毒をおこす菌やカビについての知識はあるのですが、水分活性の低い(菌やカビの繁殖に必要な水分が少ない)羊羹などにカビが発生するとは思ってもみない事でした。そこでWallemia sebiについて、いろいろと調べてみました。


 Wallemia sebi(ワレミア サビ)は、俗名アズキイロカビと言い、乾燥を好むカビ。チョコレート、カステラ、羊羹、干し柿など糖度の高い食品、穀類、貯蔵農産物、ジャム、乾燥食品に発生する事が多いカビです。特有のアズキ色、チョコレート色を呈し、汚染する食品の色とよく似ていて、気づきにくいことがあります。 ほこり、じゅうたん、畳表などからも多数検出されるカビです。病原性はなく、カビ毒も産生しません。皆さんもご存じかと思いますが、カビが繁殖する時に人に有害なカビ毒を産生するカビがあります。Aspergillus flavus(アスペルギルス フラバス)というカビは、アフラトキシンというカビ毒を産生します。アフラトキシンは発がん性があることが知られていますよね。このカビはパン、まんじゅう、ケーキ類、紅茶などに発生するほか、ピーナッツ、ピスタチオをはじめとするナッツ類、トウモロコシ、種々の穀類、穀粉類などに発生します。このカビもほこり、土壌など広く環境中に分布しています。 他にもカビ毒を産生するカビは沢山ありますので注意が必要です。和菓子に限らず食品を扱うには、環境を清潔に保ち、手の消毒を徹底することが重要ですね。ご自分で作ったものをご家庭内で消費するのは問題は起こりにくいですが、お友達に差し上げたりする際には、これらの事を念頭に置いて、十分な注意が必要ですね。


饅頭に生えたWallemia sebi(ワレミア・セビ)

写真は東京都福祉保健局「食品衛生の窓」より抜粋

 近年、環境中のウイルスやその他の病原菌を除菌することができると、二酸化塩素を主成分とした製品が開発、販売されています。噴霧型や置き型などがありますが、二酸化塩素そのものの匂いがきついことと、眼や呼吸器系の粘膜を刺激するなどの報告もあります。現在の日本で二酸化塩素の使用が認められているのは、水道水の殺菌(一時消毒)と小麦粉の漂白ですが、大幸薬品が販売している「クレベリン」については、大幸薬品が実験したデータ(除菌効果やラット、マウスに対する毒性試験)が公開されていますので、ご興味のある方はご覧ください。

大幸薬品 クレベリン学術情報

和菓子教室はな

東京製菓専門学校和菓子専科で学び、製菓理論を得意とする講師による和菓子教室です。伝統的な手法の和菓子から、それを踏まえた新しい手法の和菓子および意匠を、そして、和菓子職人さんが長い時間をかけて習得した技術である製餡や生地つくりを、製菓理論に基づいた方法で、どなたでもご家庭で失敗なく簡単に再現することができる和菓子作りをお伝えする教室です。

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